本学副学長/リハビリテーション学部学部長の木山博資教授の共著論文が、英国科学雑誌 Brain (IF:11.7)に掲載されました。

  • 2025/07/09
  • リハビリテーション学部

本学副学長/リハビリテーション学部学部長の木山博資教授の共著論文が、英国科学雑誌 Brain (IF:11.7)に掲載されました。
この論文では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)において運動機能は失われる一方感覚機能は失われない謎に迫りました。


 

Tra NT, Kiryu-Seo S, Kida H, Wakatsuki K, Tashiro Y, Tsutsumi M, Ataka M, Iguchi Y, Nemoto T, Takahashi R, Katsuno M and Kiyama H (2025) Absence of the axon initial segment in sensory neurons suggests a novel mechanism of resilience to ALS pathology Brain


論文DOI: https://doi.org/10.1093/brain/awaf182

名古屋大学医学系研究科プレスリリースサイト:https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Bra_250708.pdf



筋萎縮性側索硬化症(ALS)では脊髄の運動ニューロンは徐々に死に至り運動機能は徐々に失われますが、一次体性感覚神経細胞(脊髄神経節細胞)は生存するため、感覚は残ります。
この運動ニューロンと感覚ニューロンの運命の違いの原因を、ALSのモデル動物と障害神経細胞を特異的に検出する遺伝子改変マウスを用いて調べました。
正常な運動ニューロンでは細胞障害レベルが高くなると軸索起始部(軸索初節:AIS)の構造が分解してゲートを開くように軸索内に大量のミトコンドリアを送ることができ、軸索変性が防がれます。
神経細胞の障害が回復するとこのAIS構造は再び形成され通常状態に戻ります。
一方、ALSマウスでは細胞障害レベルが高まってもAISが分解せず、軸索生存に必要なミトコンドリアが軸索に送られていないことがわかりました。一方、一次感覚ニューロンでは神経細胞の起始部に運動ニューロンのようなAIS構造の存在が確認できず、もとから軸索(突起)への輸送のためのゲートの開閉機構がなく、軸索障害時には自由に必要なミトコンドリアが輸送され、細胞死が起こらないことが明らかになりました。
この神経細胞障害に応じたAISの形成維持と崩壊消失のメカニズムは神経細胞を多彩なストレスから守るための重要な仕組みであると考えられます。


 

Tra NT, Kiryu-Seo S, Kida H, Wakatsuki K, Tashiro Y, Tsutsumi M, Ataka M, Iguchi Y, Nemoto T, Takahashi R, Katsuno M and Kiyama H (2025) Absence of the axon initial segment in sensory neurons suggests a novel mechanism of resilience to ALS pathology Brain


雑誌HP: https://doi.org/10.1093/brain/awaf182

名古屋大学医学系研究科プレスリリースサイト:https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Bra_250708.pdf


 

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